ワインコラム

ワインは冷やす?冷やさない?美味しく飲める適温を徹底解説!

「赤ワインは常温で」普段ワインを飲まない方でも、何となく聞いたことがあるこの言葉。「常温って何度?」「なんで冷やすといけないの?」と疑問に思われたことはないでしょうか。この「赤ワインは常温説」、実際のところはどうなのか、白ワインやスパークリングワインは冷やして良いのか、ワインの温度にまつわる疑問を分かりやすく解説いたします。

赤ワインは冷やすとどうなるの?常温が良いといわれる理由と適温をご紹介


赤ワインを飲むときの適温はライトボディなら12~14度、フルボディなら16~20度といわれています。「ボディ」とはワインの深みを表すもので、味わいによって決められるので細かい規格があるわけではないのですが、最も重厚なフルボディはタンニンが多く含まれており、渋みと濃厚な香りが特徴です。最も軽やかなライトボディはタンニンが少なく、アルコール度数も低めのものが多いので日常的に飲むのにぴったり。ミディアムボディはその中間で、ワインの味わいも楽しめ、お料理にも合わせやすいのが特徴です。

赤ワインの適温には、実はこのタンニンが深くかかわっています。「赤ワインは渋くて苦手」という方にお話しを聞いてみると、「渋いのが嫌だから冷やして飲んだ」と仰るのをよく耳にします。実はこれが逆効果。赤ワインは冷やすと渋みが際立ってしまうのです。赤ワインの渋みが苦手という方は、飲みやすいものが多いライトボディの赤ワインを、適温の12~14度で一度味わってみてください。苦手だった渋みが和らいで、ワインの豊かな香りが感じられますよ。

もちろんワインごとに様々な味わいがありますので、ライトボディなら絶対に12~14度、フルボディなら16~20度と一概にいえるものではありませんが、ワインの渋み、豊かな香りや味わいを良いバランスで楽しめる温度がこの「赤ワインは常温で」という言葉に込められています。

冷蔵庫は冷やしすぎだった⁉白ワインの適温と正しく冷やす方法


赤ワインとは逆に、冷やして飲んだ方が良いといわれる白ワインにも適温があります。一般的に辛口なら10度前後、甘口やスパークリングワインなら6~8度程度が白ワインを美味しく飲める温度といわれています。
冷蔵庫の温度は5度前後が多く、設定によってはもっと冷たくなりますので、実はワインを入れるには温度が低すぎるんです。白ワインは冷やしすぎると豊かな香りや甘味を感じにくくなりますので、ワインの風味をゆっくり堪能したい時は、冷蔵室より少し温度高めな野菜室に入れて冷やしておくのがおすすめです。

ちなみに、「なんだか味わいがぼやけている…」と感じる白ワインがあれば、あえて冷蔵室でしっかり冷やすという方法も。冷やすことで酸味が際立ち、フレッシュ感あるキリっとした味わいになりますよ。

ワインがもっと美味しく飲める!正しい冷やし方をご紹介


先ほどもご紹介した通り、ワインを冷やすのにおすすめなのが冷蔵庫の野菜室です。白ワインの適温に近い温度なので、庫内でワインが転がらないよう気を付けて保管しておけば、冷蔵庫から取り出してすぐに美味しく飲むことができますよ。

ワインをゆっくり楽しみたい時は、冷蔵庫から出した後でワインクーラーに入れて冷やすのがおすすめです。冷やしすぎには注意が必要ですが、暑い季節でも最後まで美味しくワインを飲むことができるうえに、見た目も華やかでホームパーティーにもぴったりです。

最後に赤ワインの冷やし方をご紹介します。「赤ワインは常温で」ですが、夏は暑く、冬は寒い日本で本当にワインを常温保管していたら劣化してしまいます。ワインの保管に適した温度は13度程度ですので、赤ワインは野菜室などのひんやりと冷たく、温度が一定の場所で保管し、飲む前に室内に出して適温になるのを待つのがおすすめです。
冷やしたり、常温に戻したり、少し面倒に感じられるかもしれませんが、このひと手間もワインの味わいのひとつです。ワインがお好きな方はもちろん、ちょっと苦手かも…という方も、ぜひ一度、ゆっくりじっくり、ワインを味わってみてくださいね。

ワインを冷やしすぎてしまったときの対処法


ワインは冷やすまでにかかる時間は短く、常温に戻すまでの時間は長くかかるのが特徴です。ワインを冷やしすぎてしまうと本来の味わいを楽しむことができなくなってしまいます。

冷やしすぎたワインを常温に戻すには時間がかかってしまいますので、簡単にワインの温度を上げることができるデキャンタージュという方法をご紹介します。

デキャンタ―ジュとは、ワインをデキャンタと呼ばれるガラス容器に移す作業のことです。デキャンタ―ジュをする目的は、ボトルの底辺に溜まった澱(オリ)を取り除くため、香りをよくするため、味わいをまろやかにするためなど様々な目的があります。

基本的には温度を上げるためにする作業ではありませんが、冷やしすぎたワインを常温に戻す際にとても便利です。デキャンタがないときは、口の広いピッチャーで代用しても問題ありません。

ワインをデキャンタに移すときに空気に触れることで、2°Cほどワインの温度が高くなります。また、グラスに注ぐことでワインの温度は1°C上がります。この方法を使うと極端に冷えていなければ、比較的すぐに適切な温度まで戻すことが可能となります。冷蔵庫やワインクーラーで冷やしすぎてしまったなと思ったら試してみてはいかがでしょうか?

少し専門的になりますが、

・室温23°Cの部屋に15分ワインを置いておくと1°C上がる
・デキャンタ―ジュを行うと2°C上がる
・ワインをグラスに注ぐときに1°C上がる

という温度の変化を知っておくと、ワインを冷やしすぎてしまった時の対処に役立ちますよ。

冷やすとさらにおいしくなるワイン


ここまでワインの種類や特長に合わせた温度をご紹介してきましたが、ワインによっては冷やしたほうがさらにおいしく楽しめるものもあります。

渋味が少ないワイン
渋味が少ないライトボディの赤ワインなら冷やして飲むのにおすすめです。温度が下がると味が引き締まってよりすっきりとした飲み口になり、フレッシュな味わいや果実の風味を楽しむことができますよ。

酸味のあるワイン
酸味のある白ワインは冷して飲むことで酸味が引き締まりはっきりとした味わいになります。冷しすぎると香りや味を感じにくくなりぶどう本来の風味を楽しめなくなってしまいますので、適温を保ちましょう。

フルーティーなワイン
果実の香りがあるフルーティーなワインは、冷やすことでその香りがより一層際立ちます。ワインは空気に触れ温度が上がることで香りや味わいが強調されるので、複雑な香りがあるものではなく特徴的な果実味のあるワインを選ぶとより良いでしょう。

スパークリングワイン
スパークリングワインなど“泡”があるワインを飲む際は、6~8°Cとやや低めの温度に冷やすことで、爽やかな味わいときめ細やかな泡を楽しむことができます。甘口のスパークリングワインの場合は、さらに4°Cくらいに冷やすと甘味と酸味のバランスが引き立ちますので参考にしてみては。

ワインは温度によって味わいが大きく変化します。また、季節によってもワインの適温が変わることがあり、夏は少し重たい赤ワインも若干冷やしたほうがおいしく感じられることもあります。温度による違いを探しながらワインを楽しんでみてはいかかでしょうか。

適切な温度でのワインの保管方法

温度によって味わいが変化するワインは、どのような環境で保管するのが良いでしょうか。
適切な温度でのワインの保管方法についてご紹介いたします。

ワインセラーで保管する場合
ワインセラーはワインの保管に適した「温度」「光」「湿度」でワインを保管することができる専用の道具です。

ワインの理想的な保存環境は、温度が12~15度で変化が少なく、日光や蛍光灯などの光の当たらない涼しい場所です。
また、コルクで栓をしているワインの場合は湿度も重要です。湿度が低すぎるとコルクが乾燥してボトルの中に空気が中に入るため、ワインが酸化してしまいます。そのため、コルクで栓をしたワインの保管は湿度70~80%の環境が望ましいのです。
これらの環境を全て整えてくれるワインセラーは、やはりワインを保管するために最も良い環境ということができます。

そんな頼れるワインセラーですが、実はどんなワインでも入れれば良いというものではありません。
ワインの長期保管・熟成が目的の場合は、基本的にどの種類のワインでも常にワインセラーの温度を12~15度に保っておく必要があります。一方で短期保管が目的の場合は、ワインの種類に合わせた温度で保管しておくことで、いつでも美味しくワインをいただくことができます。

ワインセラーは庫内の温度調整をできるので、保存期間や目的に合わせて利用することで、ワインを最高の環境でねかせておくことができるのです。

大切なワインを長期熟成しつつ普段からもワインを楽しみたい方は、保管用と飲むのに適した温度に調整するためのものと二つ用意しておくと良いですね。小型の家庭用ワインセラーもありますので、こだわりたい方は購入してみるのも良いかもしれません。

冷蔵庫で保管する場合
ワインセラーがない場合は、「光」「温度」「湿度」の条件をどのように整えるかが重要となります。
まず「光」は瓶を新聞紙などでくるみ保存することで遮ることができます。
続いて「温度」ですが、家庭でワインの適温である12~15度に比較的近い温度が保てるのが野菜室です。
比較的近いといっても、野菜室の温度は約4~8度と冷蔵庫よりやや高い程度の設定のため、ワインの適温を考えると低すぎます。
野菜室でワインを保管する場合は、飲むしばらく前に外に出して適温に戻してから飲むと良いですね。

冬場なら野菜室に入れず暖房が当たらない涼しい場所で保管する方法もあります。しかし、寒い地域だとワインが冷えすぎてしまうこともあるので、その場合はやはり野菜室に入れて保管すると安心です。

野菜室にワインを入れるときは横に寝かせておくとワインの液面がコルクに触れるので乾燥しにくくなりますよ。新聞紙等にコルクまでしっかり包んだ上で、ボトルを寝かせて保存しましょう。

ご家庭の中でワインを保管するためのオススメ場所として野菜室をご紹介しましたが、開閉の振動がボトルに伝わるので、静かに保管できるワインセラーに比べて劣化は進みやすくなります。
野菜室に入れる場合は長期保存はせず、早めにワインを飲むのが最も美味しくいただくコツかもしれません。

ワインは保管されている間もボトルの中で常に風味が変化し続けています。ワインの熟成を損なわないためにも適切な環境で保管する方法を覚えておくと良いでしょう。